私が心より尊敬していた空の写真家が亡くなったそうだ。
小学校や中学校の頃はよく窓側の席に座ることが多く、空をぼんやり眺めていた。
高校に入ってからは携帯電話を渡され、汽車の車窓から見える景色や、夕空の写真を撮っていた。 ただそれを人に見せても「特に何も写ってなくない?」みたいなリアクションが多く、一度きりの空の模様はそこまで特別なものでも感情を入れるものでもないようだった。
そんなおよそ20年前くらいのある日、ネットサーフィンをしてたら宝石のような素敵な空の写真がたくさんあるサイトがあった。それがこのサイトであり、この写真家だった。しかも写真集をいくつか販売しているそうだ。
しかしまだ空の写真というものがメジャーでなく、大手の書店ではとても見つかるものではなかった。根気よく探したら大分市のパルコにあるヴィレッジヴァンガードで見つけることができたが2400円は高校生にとって高価なものだった。 ましてやその頃はゲーセンで生活をしていたのでとてもじゃないが出せる金額ではなかった。
上京して少しすると新宿で写真展をやっていて、いてもたってもいられずに行ってきた。そこで運よく羽部さんとお話をすることができた。 会話の内容はもう覚えていないがとても素敵な時間を過ごした記憶だけが残っている。その時買った本には写真と力強いメッセージが添えられていた。
それから紆余曲折ある人生を送る中で何かの決断を迫られるときや、立ち止まるときにはよく見ていたっけ。
これも結構読んだと思う。自分の物語は自分で書き換える。
ホームページの方にはVOICEのコーナーがあり、そこには金言がちりばめられている。
写真家を目指したい人への道のりや、気の持ち方や過去の出来事や決断のきっかけといったものが残っている。
そしてこのサイトは過去に1回リニューアルしている。
リニューアル前にあったVOICEの中でとびきり刺激を受けたのは、その当時Tumblrに残してあって今でも見られるようになっている。忘れた記憶があるから忘れたくないものを残すようになってからのものだ。
それから何年も十何年も経って、ある程度お金に困らなくなったタイミングで発表されてるであろう作品をすべてそろえた。いくつかは絶版になってしまったが、それも根気強く中古書店やヤフオクをあさり回収できた。
写真展で買った最初の本は、ずいぶんと傷んで表紙には染みがあったり、角はぶつけた跡が残ったりしているが、それがその十何年の重みなんだろう。初めて写真集を見つけた大分市のパルコは建物ごとなくなっていた。
空の上にはどんな景色が広がっているんだろう。空の上で何をしているんだろう。
ありがとう。