BlackIceCoffeePhenomenon

溶け出す氷によって味が薄くなると併せ、味覚が苦味に慣れていくことで、加速度的に味覚への刺激が減衰する現象に関するブログです。

晩秋の風と斜陽を連れて

能動的に今年二回目の映画館に行った。
エヴァガンダムみたく、見ようぜと誘われていく事はあるけど、自分から行こうとなるのは今年二回目。およそ20数年ぶりとなる。

 

公開初日に行くために有給まで取ったともなると、かなり大きい。
見に行ったのはほかでもないARIA The BENEDIZIONEだった。
べねでぃじおーね、祝福という意味らしい。

前作に続く素晴らしい時間を過ごした。
やっぱり相変わらずネタバレは書かずに、前回が映画館に関する感想だったので、今回はオタク感みたいなものに触れようと思う。

 

アニメやゲームや旅を嗜む自称にわかオタクである。
なぜにわかを自称するかというと、本当に好きな人と比べると、どうしてもそこまで情熱を持ってないからである。
それこそ昔は腱鞘炎になるまで弐寺をやったりしてたけど、それは過去で今は5ゲームくらいすれば満足してしまう、10時間も籠るような人にはなれなくなってしまった。

アニメや音楽のアーティストとかも同じく、公開初日であるとかライブとかに執着しない性分だった。
好きである事に変わりはないが、そこに払える犠牲は他より安い。

東京にいた頃はそれを痛感する場面が多く、好きなモノ専用のアンテナを張り切れず
気づいた時には予約終了、完売を何度も目にしてきた。
人口が多ければそれだけ競争も激しくなるので当然ではあるんだけど、その競争に勝てない事がにわかを自称するのに十分な理由かなと。

 

今回であれば有給を払ってきた。
本当の人であれば、丸の内ピカデリーでやってた舞台挨拶のチケットまで取るんだろうけど、そこまでアンテナは張っていなかったし気づいた時には予約も完売してたであろう。しかしここでは違う。気づくのが遅くても、本当の人ほど情熱を持てなくても相当な体験を得られる。

 

予約をせずに行っても、ほぼ一番いい席が取れる。
競争相手が少ないので、にわかでも十分ランキングに挑めるのだ。結果的にその地域ではガチになってしまうんだろうけど。
謙遜の多い化け物になるかもしれないけど、それでいい。

 

好きなものを程よい努力で、ほぼ最大に近い体験が得られるこの街はいい。
全国を相手にしない限りは、ずっと幸せでいられるだろう。

 

映画の中身を頭の中で反芻しながら歩く商店街の中には、
どこかの枯草の香りを帯びた風が漂っていた。