BlackIceCoffeePhenomenon

溶け出す氷によって味が薄くなると併せ、味覚が苦味に慣れていくことで、加速度的に味覚への刺激が減衰する現象に関するブログです。

タイガーStyle

特に散文

 

この方、富士見台に住み日暮里に出稼ぎに行くものでして、生活基盤のゲームセンターは中村橋か江古田、それか池袋であった。

その昔、江古田には喫茶トキというスパゲッティのものすごく美味しい喫茶店があった。まだ自分が美食を求めるとか、純喫茶の見た目でスパゲッティが推しというギャップに気づかない頃でも、そのお店には際立つものがあった。


普通サイズのスパゲッティがすでに大盛サイズというものだ。通っぽく言えば、その喫茶店の一番の推しがスパゲッティだという事。 レトロな雰囲気の中で、噛めばぷちぷちと千切れるナポリタンを腹いっぱい食べて帰って、今日は不思議な店に行ったなーと、また行く機会あればなーと思ううちに閉店してしまった。

食べログや当時のブログを見ても、これほどまで閉店を惜しまれた店はないんじゃないかってくらい感謝と惜しむ声があった。

 

 

大体同じ時期くらいだったか、江古田と中村橋の間には練馬がある。特別な紙切れに「練馬 太郎」と試し書きするための施設がある。その駅そばには梅もとというつけ麺屋さんがあった。

20玉まで同一料金、但し残したら罰金というスタイル。 そもそもつけ麺というだけで普通のラーメンより腹が膨れやすいのに、大盛り以上への道がほぼ無限に用意されている。こういう時に小食はひどく後悔する。食べても太らないのもあるかもしれないが、元々キャパシティが小さいのだ。

こちらは関東という街を去る時に寄る事が出来た。案の定1.5玉がギリギリだったが、何とか完食して後悔なく天国の階段の一歩を踏みしめることができた。

 

 

そういう飲食店の思い出の中で思うのは、つけ麺屋さんにしても、丼もの屋さんにしても普通盛りや大盛りはJIS規格か何かで定めてほしいという事だ。初見で行くともれなく大盛りの加減がわからない。

小綺麗な麺屋に行くと、成人男性にはちょうどいいくらいかなと思い大盛りを頼むと豚野郎向けチョモランマ盛りが出てきたりするのは、いつの世でも変わらない。

割といろんなところにあるポムの樹だってSSサイズSサイズMサイズLサイズとあってMサイズを選んだら御飯3杯分という殺意が待っている。

鶴見の鶴嶺峰に至っては量が幕内とか十両とか関脇だ。もうわからない。

ゆであがりの麺の重さで出すところもあれば、茹で前の麺の重さで出すところもあるので250gが軽めなのか大盛りになるのかもわからないものだ。

 

これらは体験してみて覚えていくことになる。シューティングゲームで言う所の死んで覚えるであり、この場合食べた時の思い出がそれにあたるだろう。食欲の満たし方のエンターテインメントの一つの形。

お店によって異なる大盛りの定義がもし個性だとするなら、捌く仕事の処理量のムラもまた個性なのだろう。だとしたら私が提供しているものは大盛りに見せかけた特盛であってほしいが。

 

そんなことを思いながら、こっちに帰ってからというもの辛い麻婆豆腐を食べられていない。唇が痛くなって毛穴から汗が出るようなそんな辛さ。 こちらで出ている激辛麻婆豆腐は辛くない。ビールと一緒に食べたらおいしいくらいの気持ちの良い辛さだ。

 

そろそろ辛さを警戒するような麻婆豆腐を食べたい。例えなくてもロンフーダイニングの麻婆豆腐を食べたい。辛さのレベルはドラゴン、タイガー、サンダー、デビルだ。タイガーで洒落にならないほど辛くて、午後半休取りたくなるあの辛さが今は恋しい。